アジア街道各駅停車 チベット編/NO.3


---田舎町ツォナでの悪夢---




ラサからバスで半日程行ったツェタンという小さな町のバスターミナルの時刻表でツォナという名前を見つけた。別に観光地でも何でもないが、地図を見るとインド・ブータンとの国境の近くで何となくおもしろそうなのでバスの切符を衝動買いしてしまった。それが、あんなことになるとは思ってもいなかった。

出発は翌日、例によって朝の5時なのでその少し前にバスターミナルへ行ってみて驚いた。待っていたのは、こんなんで峠をこえられるんかいな?と思うようなしろものだったのだ。
が、心配してもしょうがないので乗り込むことにした。
出発して間もなく、早くも災難の兆しが見え始めた。バスの床から砂埃がもうもうと立ち上り、あっというまにバスの中は視界1メートル程になってしまった。息もできない。みんなあわてて窓を開け放ち、埃を外に逃がしてやっと耐えられる状態になった。

ところが、チベットの冬は寒い。 その中を窓をフルオープンにして峠をいくつも越えて行くのだからたまったものではない。シェラフにすっぽりくるまってなんとか寒さをしのいだ。地元の人はさすがに平然としている。
結局、ツォナに着くまでその状態で、寒さと埃に耐え、尾てい骨にひびが入るかと思うほどのジャンプを繰り返しながらツォナに着いたのはもう暗くなりかけたころだった。

バス停のすぐそばに宿泊所があったのでそこに部屋をとった。部屋には簡素なベッドが6つあるだけでほかにはなにもない。女将さんが暖房用にとニクロム線を巻いた電熱器を持ってきてくれた。
しばらくすると、早速公安官がやって来た。ここは解放地区ではない上にインドとの国境とも近く微妙な地域なのだ。やばいかなと思ったがパスポートを見せて明日ラサに帰ると言ったら以外とあっさりと引き上げて行った。

翌朝バス乗り場へ行くと、きのう乗ってきたバスはもうなかった。宿泊所の女将さんに聞くと、きのうの晩出ていって、次にくるのは1週間後の月曜日か火曜日ということだ。おまけに、そろそろ雪が降るころで一度峠に雪が積もればあのオンボロバスでは越えることができないため、春までバスは来ないというおそろしい話を聞かされた。

おもしろそうだということだけで来てみたが、1週間も滞在するつもりはないし、春まで閉じこめられたのではたまったものではない。
一緒にきた2人と相談してヒッチを試みることにした。村はずれに軍隊のチェックポイントがあったので、そこまで歩いていき車がくるのを待った。

警備している10代の少年兵に昼ご飯をごちそうになったりしながら夕方近くまで待ったが通ったのは軍隊のトラックが1台だけだった。翌日も半日待ったが、1台も車は通らずヒッチはあきらめることにした。

ひでボンとジェームスは隣の町まで歩いていって車を探そうなどと言い出したが、テントも持たずに隣の町まで生きてたどり着く自信がなかったので、結局バスを待つことにした。



チェックポイントで警備している若い兵士




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